弁護士 野溝夏生

東京地判平成26・7・30(利用規約のコピペ)

事案の概要

本件は、原告(X)が、被告(Y)に対し、YがYの管理するWebサイトに掲載した規約を含む文言等が、Xの管理するWebサイトの文言等を複製又は翻案したものであり、Xの著作権を侵害したなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めるとともに、YのWebサイトに掲載された文言等を同サイトで使用することの禁止(自動公衆送信及び送信可能化の禁止)を求めた事案です。

複製や翻案、自動公衆送信(送信可能化)に関する著作権侵害については、次のエントリで説明しています。

主な争点

裁判所の判断

著作権侵害の成否

まず、著作物の複製や翻案に該当するための定義について、最高裁判例を引用しつつ、次のように述べています。
著作権の複製や翻案が問題となる事案では、ほぼお決まりとなっている部分です。

 「一般に、著作物の複製……とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいう……。すなわち、複製とは、既存の著作物と同一性のあるものを作成することをいうと解されるところ、この同一性の程度については、完全に同一である場合のみではなく、多少の修正増減があっても著作物の同一性を損なうことのない、実質的に同一である場合も含むと解される。また、著作物の翻案……とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうと解される。
 しかるところ、著作権法は、『思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの』を著作物として保護するものであるから……、既存の著作物に依拠して作成された対象物件が思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体ではない部分又は表現上創作性がない部分において、既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には、当該対象物件の作成は、複製にも翻案にも当たらないものと解するのが相当である……。
 このように、複製又は翻案に該当するためには、既存の著作物とこれに依拠して作成された対象物件の同一性を有する部分が著作権法による保護の対象となる思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要である……。
 そして、『創作的』に表現されたというためには、厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく、筆者の何らかの個性が表現されたもので足りるというべきであるが、他方、文章自体がごく短く又は表現上制約があるため他の表現が想定できない場合や、表現が平凡かつありふれたものである場合には、筆者の個性が表現されたものとはいえないから、創作的な表現であるということはできない。」

まず、Xは、Webサイトの文言自体、トップバナー画像自体、規約文言自体について、Yが複製又は翻案したという主張をしていました。
しかし、裁判所は、いずれも創作性を否定したほか、トップバナー画像自体については、創作性を認めるべきであるとしても、「複製」や「翻案」には該当しないと述べ、Xの主張を退けました。

ところで、Xは、規約文言全体の著作物性についても主張していました。
これにつき、裁判所は、規約文言全体の著作物性について、次のとおり、著作物として保護すべき場合があり得ると述べました。

 「一般に、修理規約とは、修理受注者が、修理を受注するに際し、あらかじめ修理依頼者との間で取り決めておきたいと考える事項を『規約』、すなわち条文や箇条書きのような形式で文章化したものと考えられるところ、規約としての性質上、取り決める事項は、ある程度一般化、定型化されたものであって、これを表現しようとすれば、一般的な表現、定型的な表現になることが多いと解される。このため、その表現方法はおのずと限られたものとなるというべきであって、通常の規約であれば、ありふれた表現として著作物性は否定される場合が多いと考えられる。
 しかしながら、規約であることから、当然に著作物性がないと断ずることは相当ではなく、その規約の表現に全体として作成者の個性が表れているような特別な場合には、当該規約全体について、これを創作的な表現と認め、著作物として保護すべき場合もあり得るものと解するのが相当というべ きである。」

その上で、XのWebサイト上の規約文言について、次のとおり述べ、その著作物性を肯定しています。

 「これを本件についてみるに、X規約文言は、疑義が生じないよう同一の事項を多面的な角度から繰り返し記述するなどしている点(例えば、腐食や損壊の場合に保証できないことがあることを重ねて規定した箇所がみられるX規約文言……、浸水の場合には有償修理となることを重ねて規定した箇所が見られるX規約文言……、修理に当たっては時計の誤差を日差±15秒以内を基準とするが、±15秒以内にならない場合もあり、その場合も責任を負わないことについて重ねて規定した箇所がみられるX規約文言……など)において、Xの個性が表れていると認められ、その限りで特徴的な表現がされているというべきであるから、『思想又は感情を創作的に表現したもの』……、すなわち著作物と認めるのが相当というべきである。」

そして、次のとおり述べ、Y規約文言は、X規約文言を複製したものであると判断しました。

 「そして、Y規約文言全体についてみると、見出しの項目、各項目に掲げられた表現、記載順序などは、すべてX規約文言と同一であるか、実質的に同一であると認められる(表現上異なる点として、原告規約文言の『当社』がY規約文言では『当店』にすべて置き換えられている点、助詞の使い方の違い、記載順序を一部入れ替えている箇所……、表現をまとめている箇所……、『千年堂オリジナル超音波洗浄』『千年堂オリジナルクリーニング』を『銀座櫻風堂オリジナル超音波洗浄』『銀座櫻風堂オリジナルクリーニング』としている箇所……などがあるが、これらは、極めて些細な相違点にすぎず、全体として実質的に同一と解するのが相当である。また、X規約文言とY規約文言の相違点が上記のとおりであることは、Yが、X規約文言に依拠して、Y規約文言を作成したことを強く推認させる事情というべきである。)。
 したがって、Yは、Y規約文言を作成したことにより、X規約文言を複製したものというべきである。」

差止請求の可否、損害の発生の有無及び額

差止請求は認められたほか、損害賠償として5万円の支払が認められました。

まとめ等

一般的に、契約書や利用規約は、定型的な部分も多く、表現の幅が広くないと考えられるため、創作性を欠くとして、著作物性が否定されることが多いと考えられています。
しかし、本事案のように、規約全体の著作物性が肯定されるケースもありますから、他社が公開している利用規約をコピペして、自社の利用規約とすることは、他社の著作権を侵害してしまう可能性があることになります。

そもそも、利用規約は各サービスごとに内容が変わるものですから、他社の公開している利用規約が、自社のサービス等の利用規約に適合しているかという問題もあります。
適合していない利用規約を用いることで、後に何らかの不利益を被ることもあり得ます。

このように、他社の利用規約をコピペして利用することは、次の2つのリスクがありますので、弁護士等と相談の上で、自社に合った利用規約を作成することをおすすめします。

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