弁護士 野溝夏生

東京地判平成30・2・27(レベニューシェアと商法512条に基づく報酬請求)

事案の概要

本件は、被告(Y)が原告(X)に対してシステム開発を発注し、Xがこの業務を行った件につき、Xが、Yに対し、その開発に関わったスタッフの統計上の時給を参考にした相当報酬額の支払を、商法512条に基づく相当報酬請求として求めたものです。
また、これと同時に、Xは、Yに対し、仮にXY間で契約が締結されていないとしても、契約上の過失を理由として、不法行為に基づく損害賠償請求も併せて予備的に請求していました。

商法512条

商法第512条 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。

商法512条が規定された趣旨は、会社等も含む商人は、通常、無償で他人のために営業の範囲に属する行為を行うことはないだろう、という点にあります。
同条の適用のためには、ベンダーがユーザーのために営業の範囲に属する行為をすれば足り、何らかの委託があることは適用の前提にはなりません。

なお、東京地判平成17・4・22は、相当報酬額の算定方法について、次のように述べており、一般的にこの判示内容が参考になるものと考えられます。

東京地判平成17・4・22
 「コンピューターシステムの開発の原価の大部分が技術者の人件費であり、その人件費は作成するプログラムの分量に概ね比例する」

主な争点(一部省略)

裁判所の判断

XY間の契約の性質及びXによる履行の有無

 「XとYは、……システムを共同で開発することとし、Xは、Yに対し、Xの報酬について完全成功報酬型とし、上記システムによるサービスを開始してから得られる収益をXY間で合意された比率に従い分配することによりXが費やした開発費用を回収することを提案したこと、Xは、ストックオプションの付与も求め、Yはこれに応じる方針であったこと、Xは、上記システム開発に着手したものの、そのシステム開発における各スプリント(小分けされた開発期間)における進捗目標を達することができず、開発が滞り、リリース予定も数次にわたり変更され、平成27年4月に至っても上記システムに基づくサービスを開始するまでに至らなかったこと、Yは、……サービスの提供を開始することなく、別途、異なるサービス内容を有する……システム開発をX以外の会社に注文し、これに基づくサービスを開始したこと、XとYとの間で、Xによるシステム開発期間が予定よりも長期にわたり、サービス開始に至る見通しが立たなかったため、契約書作成に至らなかったことなどを認めることができる。」

以上の裁判所の認定をまとめると、次のとおりとなります。

裁判所は、以上の各事情の下では、商法512条に基づく報酬請求権が発生するためには、単にXが労力を投じたにとどまらず、少なくとも、Xがシステムを開発し、Yがそのシステムに基づきサービスを開始することができる状態に至ることが当事者の合理的意思であったと述べました。

 「以上によれば、XとYとの間で収益分配の比率等の詳細が詰められるに至ってはいなかったものの、XがYに提案し、Yがこれに応じたとおり、Xは、開発するシステムに基づくサービスが開始されることにより得られる収益を分配することにより開発に要した費用を回収して利益を上げることを前提に、システム開発を行っていたのであるから、当事者のかかる合理的意思を前提とするならば、本件において商法512条に基づく報酬請求権が発生するには、Xが単に労力を投じたに止まらず、少なくとも、Xがシステムを開発し、Yがこれに基づきサービスを開始することができる状態に至ったことが必要というべきであるが、かかる状態には至らなかったことが認められる。」
 「よって、商法512条に基づく報酬請求権が発生するとのXの主張を採用することはできない。」

裁判所の判断を見ると、Yが主張していたような、レベニューシェア型の契約が成立したまでを必ずしも裁判所は認めてはいません。

最後に、あくまで、本件における「サービス開始により得られた収益の分配による開発費用の回収」という事情が、本件における商法512条の判断に作用したものとであって、この判示部分が一般化できないことには注意が必要です。

まとめ等

事例判断という部分が大きいですが、商法512条に基づく報酬請求の可否等に関し、参考となる裁判例の一つということができるかと思われます。

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