著作者は、著作権法上、著作者人格権と著作権を享有します(17条1項)。
そのため、著作権侵害を訴える場合には、その前提として、そもそも誰が著作者であるかが問題となることもあります。
著作者とは、著作権法によると「著作物を創作する者」とされています(2条1項2号)。
そして、著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とされています。
したがって、著作者が誰か、という問題は、著作権法でいう「著作物」を前提に考える必要があります。
なお、法人は思想又は感情を創作的に表現できませんから、著作者となるのは、原則として、自然人のみということとなります。
ただし、これには例外がありますが(職務著作)、ここでは取り扱わず、別途取り扱うこととします。
著作物については、別記事にて述べたとおりですので、ここでは割愛します。
また、一部の著作物の著作者に関しては特別規定が存在していますが、ここでは総論のみ取り扱うこととします。
さて、どのような場合に著作者の認定、すなわち誰が著作者であるかが問題となるかというと、主に2つの場合が考えられます。
ちなみに、著作権は譲渡が可能ですから(61条1項)、著作権者が著作者ではないことも当然あり得ます。
そのため、著作権者が著作権侵害の主張を行う場合、著作者から著作権者たる地位を適法に承継したのか、ということも問題となることがあります。
すなわち、真の著作者から著作権者たる地位を承継したのか、その地位の承継自体は適法か、が問題となることがあります。
なお、著作者の認定は、著作者の死亡を起算点とする著作権の保護期間を定める基準にもなります。
ですから、著作者の認定は、著作物性の認定と並んで、著作権侵害に関する訴訟において、主要な論点の1つであるとも言われています。
著作権法の定める著作物及び著作者の定義からすれば、著作者というためには、「自己の思想又は感情を創作的に表現したといえる程度に、著作物の創作的表現に関わった者」でなければならないと考えられています。
もっとも、結局のところ、一般的にはそのように言えるとしても、具体的な著作物の著作者を認定するにあたっては、当該著作物の特色を考慮しなければなりません。
したがって、この基準から直ちに結論が導かれることにはならず、著作者の認定は相当困難な問題を生じさせます。
共同著作者の前提となす共同著作物とは、著作権法上、「二人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」とされています(2条1項12号)。
なお、共同著作物の場合、著作者全員の合意がなければ権利行使ができないほか、自らの持分の譲渡にも他の共有著作者の同意が必要となる等、単独著作物とは異なるルールに原則として従うこととなります。
著作者の認定自体は、単独著作者の認定とさほど変わりがないため、共同著作者の認定に特有の問題を述べることとします。
共同著作物とされるためには、まず、「共同して創作」することが必要です。
例えば、1枚の絵を2人で同時に描いたような場合には、「共同して創作」したものといえます。
必ずしも同時に創作行為が行われる必要はなく、時間的なずれが生じていたとしても、関与者間で共同創作の意思があるような場合には、完成された成果物は共同著作物になります。
次に、「寄与を分離して個別的に利用することができない」ことも必要です。
その判断基準については、独立して著作物と認めるに足りる創作的表現といえるか否かをいうものと解されています。
例えば、1枚の絵は、各関与者の寄与を分離して個別的に利用できないものと通常いえるでしょう。
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