弁護士 野溝夏生

ユーザの自己都合により一方的に契約を解除された場合

ユーザの自己都合による契約解除の場合の法的処理

プロジェクトを進行する中で、ユーザが開発委託契約を解除する場合があります。
その理由は複数あり得ますが、ここでは、ユーザの自己都合により契約を解除した場合について記載します。

ユーザの自己都合による契約解除としては、ユーザ側の方針転換を含む経営判断等により、ユーザにとって開発予定のソフトウェアが不要になった場合等が主として考えられます。
ユーザの自己都合により契約が解除された場合には、損害賠償が専ら問題になることが通常でしょう。

当事者間の契約

契約書等においてユーザの自己都合による契約解除に関する定めがなされていた場合には、その規定が適用されることとなります。

他方で、その定めがなされていなかった場合には、典型契約の基本原則に従うこととなります。
ソフトウェア開発委託契約は、請負契約又は準委任契約のいずれかとされるのが通常ですから、いずれか適用されることとなる契約類型の基本原則に従うこととなります。

請負契約

ユーザは、ベンダによってソフトウェア開発が完了しない間は、いつでも委託契約を解除できます(民法641条)。
したがって、契約に別途定めがあれば別ですが、そうでなければ、ユーザが契約を解除すること自体は自由です。

ベンダによる既履行部分については、その成果物をユーザに引き渡すことによってユーザが利益を受けるときは、当該部分は完成したとみなされます。そこで、ベンダは、ユーザに対し、その完成割合に応じて報酬を請求することができます(民法634条柱書、同条2号)。

また、ユーザは、ベンダに対し、解除がなされなかったならばベンダが得られた報酬のうちの利益相当額や、解除時に既履行部分とは別途発生していた費用につき、これらを損害として賠償する義務を負うこととなるものと考えられます(民法641条)。

準委任契約

ユーザはいつでも委託契約を解除できます(民法651条1項)。
したがって、契約に別途定めがあれば別ですが、そうでなければ、請負契約と同様に、ユーザが契約を解除すること自体は自由です。

委託契約では、期間に応じた報酬が設定されているのが通常ですから、期間の途中で契約を解除した場合、解除時以降の報酬をベンダは得られなくなります。
とすれば、当該契約解除は、ベンダが以後の報酬を得られなくなるという不利な時期になされたものとして、ユーザは、ベンダに対し、解除がなされなかったならばベンダが得られた報酬のうちの利益相当額や、解除時に既履行部分とは別途発生していた費用につき、これらを損害として賠償する義務を負うこととなるものと考えられます(民法651条2項柱書本文、同項1号)。

ベンダによる既履行部分については、当該準委任契約の性質が履行割合型準委任契約なのか成果完成型準委任契約なのかによって多少差異はあります。
もっとも、ベンダがユーザに対して既履行部分の報酬にかかる利益相当分を請求できると考えられる点では変わるところはありません。

履行割合型準委任契約

ベンダによる既履行部分について、ベンダは、ユーザに対し、その割合に応じて報酬を請求することができます(民法648条3項柱書、同項2号)。

成果完成型準委任契約

ベンダによる既履行部分について、ベンダは、ユーザに対し、その成果物をユーザに引き渡すことによってユーザが利益を受けるときは、その完成割合に応じてユーザに報酬を請求することができます(民法648条の2第2項、634条柱書、同条2号)。

ユーザの自己都合による契約解除?

ベンダはユーザが自己都合により契約を解除したと考えている場合であっても、ユーザからは、ベンダに債務不履行があったことによる債務不履行解除である、又は合意解約である、といった主張がなされることがあり得ます。

そのため、ベンダとしては、ユーザの自己都合による契約解除であると認識した場合には、契約解除の理由や原因を特定し、これを書面に残すことにより、自己都合による契約解除ではなかったというユーザからの主張をされないための措置を講じるべきでしょう。

他方で、ユーザとしても、ユーザの自己都合による契約解除でない場合には、契約解除の理由や原因を特定し、これを書面に残すことにより、自己都合による契約解除であったというベンダからの主張を抑制するための措置を講じるべきと考えられます。

ユーザが自己都合による契約解除をする際に考えるべきこと

ユーザとしても、やむを得ず契約解除をしなければならない場合があると思われます。
その場合には、ベンダに対して支払わなければならない金額を大まかにでも算定した上で、本当に契約解除すべきかどうかを判断するべきであると考えられます。
また、その上で契約解除をすることとなった場合にも、算定額に照らしてベンダからの請求額が妥当かどうかを判断し、妥当でない場合には合理的理由の説明を求めるなどの対応に出るべきと考えられます。

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